2016年7月 1日 (金)

バローロ神話の起源Cannubi(カンヌビ)

CANNUBI, ALL'ORIGINE DEL NATO DEL BAROLO   

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GAUDI’は言った。『個性や特徴は起源に帰す。』 この言葉のとおり、カンヌビの丘とそのワインを見れば、バローロ神話の真髄がわかる。カンヌビはバローロ最古の畑であり、イタリアワイン醸造において源となる畑といえる。

左の写真はブラの町のManzoneの個人所蔵によるCannubi。 ヴィンテージ1752年のボトル。

1844年貴族Marchesa Colbertのバローロよりも以前に存在し、その頃から既に有名で、最上級クラスの象徴だったことがわかる。

カンヌビ畑は優しいうねりのある丘が南北に伸びている。バローロの旧市街からアルバに向かう2つの道に挟まれている。

標高は220m~320mなので緩やかな傾斜。最良部の方角は南と南東。その他は、東~北東、西~北西向き。

カンヌビという名の起源は葦であると言われている。ブドウの木を支えるのにこの辺りで昔使用していた葦(Canneti)。あるいは、異なる地質が混ざった土壌を意味する交接(Connubio)からとも。

個人的には葦の語源が有力と思われる。

カンヌビはトルトニアーノやセッラヴァリアーニの土壌の合流点ではなく、テッラディバローロの土壌は粘土質の泥灰土であり、時に青みや白グレーを表面に帯びる。



 カンヌビの特徴

同じ地質の他の畑と比較すると、カンヌビは砂質を多く含む。

石灰質はケイ土の含有量が多く、水はけが良い。痩せていて、わずかな粘土質を含む。

気圧の変化や北東からの風から守られて、気候はとても穏やかである。

このような土壌気候により造られるネッビオロは、よりエレガントな味わいで、ブドウは周囲の畑よりも1週間程早く熟す。

しかし、このような気候は10年程前からであって、以前はこんなに優しい気候ではなく、秋一杯熟成を待つ為、雨や湿気、カビによる腐敗リスクも高く、時には雹に降られることもあったので、他のバローロよりも値段が高かった理由も納得できる。

カンヌビのブドウはエレガントなタンニンとバランスの良さ、豊かな風味、長期熟成などの特徴によって、洗練されたワインに仕上げる為に他の畑で造られるワインにブレンドし、使われることがしばしばある。

起源といわれるカンヌビ神話はここにある。多くのバローロ生産者から望まれるミクロゾーンであり、他にはない興奮や野心を駆り立てる。少なくとも5人に1人はカンヌビ畑を所有したいというだろう。

カンヌビ畑の内にも土壌の違いが見られる。ブルゴーニュと似ていると言われるが、多斜面のある丘は方角も多様で、特徴によって畑の区別するのは容易ではない。

カンヌビはほぼ中心に拡がっている。他の4つの畑(Boschis o Monghisolfo,Valletta, San Lorenzo e Muscatel)より高い丘の中心にある。

Fantini(1879年)、Renato Ratti (1976年)、Carlo Petrini(1990年代)を初めとする多くの有名なバローロ生産者が、わずか19ヘクタールのCannubiの中心を所有していた。(Cannubiの外側は47ヘクタール。)

真のカンヌビのワインとそのソットゾーンのワインには明確な違いがあり、ある生産者は各畑の違いを表現することに優位性があるという。

1994年以前はカンヌビは中心部のみであったが、バローロで名を馳せるようになると、カンヌビゾーンは広がった。Cannubiまたは、Cannubi Boschis, Cannubi SanLorenzo, Cannubi Valletta, Cannubi Muscatel。この辺りの畑は上手く醸造すれば、洗練されたCannubiに近づく。

2013年にMeGAの規定により、ラベルにCannubi、またはソットゾーンをCannubi Muscatelなど詳細に記載することができる。

 

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畑の特徴

Cannubi:

中心部にある。砂質が多い土壌。よりエレガントなワインに仕上がる。標高はさまざまで高いところは150m。畑だけでなくワインにも個性が見られる。カンヌビサンロレンツォのワインにやや似ている。

Cannubi San Lorenzo:  

MuscatelとCannubiの間に位置する。名前は黒死病の頃、建てられた教会に由来。標高300mに達する。カンヌビの中で一番標高が高く、風当たりもある。南東向きBusssia方面と南西向きSarmassa方面。柔らかく砂質の土壌。ワインはとてもエレガント。

Cannubi Muscatel:

Baroloの村境からVallettaの間に位置する。フィロキセラ到来以前はネッビオロだけでなく、モスカートも造っていたという。南東と南向き。やや砕けにくい、粘土質が多い土壌。ワインはカンヌビの特徴を残しながらも、熟すのを待たず飲めるタイプ。

Cannubi Boschis:

Alba方面に向かう丘の最後の部分。かつてはMonghisolfoと呼ばれていた。南東と南向き。名前は昔の所有者から取ったそうで、Ghisolfo⇒Boschisと変わっていった。カンヌビより更にバランスのよい、より涼しく、粘土質の豊かな土地。

Cannubi Valletta:

サンロレンツォが西にあり、Cannubiが北、Muscsatelが南にある場所。盆地形状から名前が付いている。北東、南東向き。石灰質と粘土質の土壌はより構造のしっかりとした、丸みのある、カンヌビより香りが控えめなワイン。

*この記事は、雑誌『Barolo&Co.』編集長Giancarlo Montaldo氏のご協力により、2016年3月発行第1号よりMichele Longo氏の記事を日本語にてご紹介。

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