トリノからたった15分電車で行くと新たな発見がありました。
Alpignano駅から歩いて15分ほどのところに今も昔のやり方、つまりグーテンベルクの活版印刷で本作りを行っている『Tallone Editore』。

タッローネ氏は私を見るなり、和紙を名古屋の方から入手して使用していると、半ば自慢げに話してくださり、日本とのつながりを感じ、嬉しく思いました。
ここは活版技術を駆使した印刷所でもあり、また出版社でもあり、興味深いものが溢れていました。
紙の種類もさながら、インクは黒色だけでも100種類あるそうです。

【 1700年代の活版印刷のアトリエ’atelier tipografico settecentesco】
3世紀にわたる ディジョン(Dijon)に始まり、パリ、そして1959年ここアルピニャーノに伝わる。

Tallone活版印刷所では、文字を彫刻刀(bulino)で手彫りする。スタンプの材料は主に錫、鉛だとか。
文字の大きさは毎回、本のサイズに合わせる。真ん中の写真はある本の一ページだが、改行時に文字が切れないよう、言葉の間隔を調整している。
フォトポリマー樹脂など使用せず、パソコンのクリックで文字を打つこともなく、果てしなく時間のかかる手作業です。しかし、本の出来上がりを見ると風合いのある、代え難いものだと実感します。

真ん中の写真は昔から使用される紙のカッターです。上のハンドルを手で回すと刃が斜めに降りてきて、カットがきれいに仕上がります。
右の写真は1400年代、つまりグーテンベルクが印刷業を始めた頃にイタリアに伝わった場所と年代が記されている。やはりローマ近郊に一番先に入ってきたようです。
活版技術そのものは中国や韓国が先だそうで、それをヨーロッパで印刷業として確立させたのがグーテンベルクだそうです。

【文字スタイルのアーカイブ l’archivio letterario del Novecento】
1930年代にアーティストたちによって文字スタイル(フォント)が開花した。特に広告の対象、目的に合わせてあらゆるデザイン文字が生まれた。現代ではその復刻版ともいえる文字が多様に使用されている。もちろんコンピューター仕様ですが。 私から見るととてもスタイリッシュな文字たちだ。

森の中に佇むこの工房は、緑と優しい日差しに囲まれ、癒しの空間です。
この環境で貴重な手工芸の本が生まれるんですね。

お嬢さんも家業を引き継いでらっしゃいます。この部屋にはここで出版された本のサンプルが保管されています。
真ん中の写真は『ピノキオ』の原作で、挿絵もここで作ったそうです。紙の色は淡いブルーでシチリアの紙製作所のものだそうです。
フォントは『ガラモンド』、とても読みやすいので、定番の人気だそうです。なんとこの本600ユーロするそうです。
右側はレオナルド・ダヴィンチの『アトランティック写本』Codice AtlanticoにあるLudovico il Moroへの手紙で、ダヴィンチの初めての履歴書だそうです。

【 parco con il mulino da carta, gli alberi secolari e le locomotive a vapore】
お庭にはオリーブオイルの搾油と同様な石臼があり、その昔紙づくりに使用されたものです。
森は樹齢100年以上の樹が生い茂っています。
そして蒸気機関車がこんなところに。 その昔、本と交換して入手したコレクションだそうです。それほど印刷した本が高価だったんですね。

Editore italiano (Bergamo 1898 - Alpignano 1968)
1938年に出版社をパリで創立。 Maurice Darantièreを活版印刷技術の師として,彼から印刷プレス機を譲り受ける。マレ地区のあるホテルで 限定作品の数々が生まれた:i Canti di Leopardi, la Phèdre di Racine, le Lettres portugaises
チャールズ・マリン(1949年)がデザインした新しい活字よる彫刻でラディゲール鋳造所の型が造られ、『Promessi Sposi』(1951-52年)』3巻を印刷した。
その後1960年にここAlpignanoに印刷所を移し、今も家族で続けている。