まだ日本に入っていない「VICARA」を訪問。
ASTI駅から車で30分ほど行くとMONFERRATOのアレッサンドリア県に入る。
ムッソリーニの時代にモンフェッラートは、アスティ側とアレッサンドリア側の2つに分けられたことで、アスティ側はアスティの名称を、アレッサンドリア側はモンフェッラートの名称を原産地呼称に使用しているが、元が一緒だったのでわかり難いところもある。
さて、当主Giuseppe Viscontiさんは名前からも分かる通り、あのヴィスコンティ侯爵とも遠い親戚にあたる方ですが、先祖の土地で、彼の祖父が始めたワイン造りを引き継ぐことに、10年前に決意してミラノから移ってきた。
この辺りの土地を15世紀から守ってきたビスコンティ家の頭文字VI, そこでコミュニケーションを担当していたCassinisのCA, ブドウ栽培をしていたRavizzaのRAを合わせて、「VICARA」として1992年に創業開始する。
彼らの畑は点在している。時代を経て各ファミリーが所有する畑があり(Vadmon, Crosia e Bricco Uccelletta)、更にこの辺りの土地を研究したところ、3000万年前まで遡ると地質学的に12種類の土地に分けられるそうです。そこでポテンシャルのある土地を少しづつ買い戻しており、畑点在の理由のひとつです。
向こうの山々が見渡せるように、モンテローザ(モンブランの次に高い山)も見えていたが、斜面は急で下方は溪谷であるため、このあたりは風がよく抜ける。また標高もバリエーションがあり、高いところでは昨年のような旱魃時にも耐えられる可能性が高い。
とはいえ、すべてに時間がかかります。ビオロジック認証に関しても3年はかかる訳で、畑を少しづつ増やしているので、年毎にビオ認証畑も増えるといった具合です。
只今年のような雨が多い場合は、病気が発生しやすいのでビオの畑では全滅だったそうです。個人的にはこの気象変化において、ビオロジック認証が本当に有効なのか見直しが必要な気が致します。
ブドウ造りを始めた先祖は1860年頃ですぐにフィロキセラ到来で、その土地を売り払ってしまったそうです。ここも買い戻したそうで、バルベーラを栽培しています。一つのラベルにはここの番地を起用しています。「CASCINA ROCCA 33」
彼は未来を見て仕事をしている。この時期、ちょうど緑肥を行っているところでしたが、従業員は昔から働く2-3人を除いて、あとは皆若い。収穫時期だけ手伝いを組合に依頼する企業も多いが、VICARAでは全員社員雇用しており、Giuseppeさんが教育し、この土地を知ってもらえるよう努めている。
万が一他の生産者のところへ移っても、実力が身についているはずだから、そこでも素晴らしいワイン作りをして、この土地のクオリティを上げてくれるだろうと話していました。
なんと、写真の向こうに見えるお城は、彼のご家族の所有するプライベートキャッスルです。
醸造所は山の上にあるので、ボトリングの車を呼ぶのも一苦労、そこで自社購入したがこんな小さなカンティーナで自前はまずないと話していた。隣のテイスティングルーム、ショップ兼事務所はシンプルだが、手作り感のある心地よい内装でした。
エノロゴは若い、かわいらしい女性Virginiaさん。Giuseppeさんも信頼を寄せているのがよく分かった。この日も何か問題があり、思うように進まない中、苦労がうかがえた。しかし、素晴らしいワインを造っているのです!
カンティーナ:オーストリア製の縦長型の樽を採用、高かったそうです...
お客様のリクエストでグリニョリーノのドッピオ(W)・マグナムサイズ!さぞ美味しいでしょうね。
元々高い天井だったところを2層に分けて作った地下室。ここには祖父の時代からのヴィンテージを保管している。販売用ではなく、彼らのテイスト、方向性を確認するためだそう。
左の白っぽい壁は石灰質を含む粘土質土壁で、触るとぽろぽろと崩れる。今は使用していないセメントタンクである。中は相当広い、大容量だったようで、いつか上手に改装して中に入れるようにしたいそうです。
右の全体に見えるレンガは後から貼りつけたもの。ここもセメントタンクだったことが分かるサインが残っている。このレンガの補装により天井を支え直しているそうです。
Giuseppeさんはお茶目な人。 余りにも古いボトルが並んでいて、ネビオロでなく、フレイザだけど大丈夫なのかと尋ねると一本開けてDivertiamoci!(楽しみましょう)と言って取り出してくれたのは
1997年ヴィンテージ。これはランチと一緒にテイスティングすることに。
さて、ランチに行こうと連れて来て下さったのは、あのお城!Giuseppeさんのご両親は住まいに使用しているようで、手入れがなされていました。
まずはお庭にあるサンルームで、グリニョリーノの泡!
DOMINO Spumante Brut Rosè (シャルマ法=マルティノッティ法)
グリニョリーノ主体にシャルドネをブレンド。色がオレンジに近いロゼで、とてもドライだがイチゴのようなベリーの余韻はあるので、生ハムなどサルミに合わせたい。
【マルティノッティ法】にこだわった理由:彼は個々のワインだけでなく、テリトリーとして売っていきたいと考えている。いわゆるタンクで行う二次発酵の方法はマルティノッティ氏が発案したもの。あのモスカート・ディ・アスティは生産者GANCIAが瓶内2次発酵ではないこの製法を取り入れ大ブームを引き起こした。そのマルティノッティ氏はこの辺りの出身者である。
ところが、DOC制定時に何も考えず大手企業のいうままに、瓶内2次発酵(メトド・クラシコ)を取り入れたといって、残念がっていました。
ラベルもこだわっており、スプマンテを開ける工程が書いてあるのだが、要するにポンと開けるまでの過程がどれほど複雑か、どれほどの工程を踏んで出来上がるのかを印象付けたもの。
これは日本の市場にあったら嬉しい一本です。
お部屋に入ると、執事がサービスしてくれ、一気に中世にタイムスリップした感じでした。
壁には大きく、ヴィスコンティ家の紋章が!更にカトラリーにもすべて紋章があり、格のせいか重く感じました(^^)
自家栽培の野菜サラダに、ツナとトマトソースのパスタ、鶏肉のコトレッタ、マンダリン(みかん)がとても甘かったです・・・
お部屋には暖炉に火が入り、どうやらこの部屋はキッチンとして使われたそうで、暖炉のあたりが窯でその跡が伺えます。
お伽の世界から出て来てカンティーナへ戻り、更にテイスティング。
本質を引き出したVicaraのフレイザ
FLEISA Monferrato DOC Freisa ヴィンテージ 2018
フレイザはネッビオロの母であり、古代品種のひとつとされる。良年にのみ造られるVICARAの貴重な希少なワインです。700本ほど、手書きで番号が打ってある。
伝統的にフレイザは微発泡で軽やかなワインであるが、これは2018年ヴィンテージで既に熟成を経ており、香りは複雑で赤果実だけでなく、たばこや森の湿った感じとスパイス、リコリスなどとてもバラエティに富んでいる。味わいはミネラルをしっかり感じ、アルコール度も高く、口の中を包むように滑らかなタンニンがあり、まだまだ熟成が期待できる。よってグラスに入れてから、時間を追うごとに香りが特に変化し、メディテーションワインとしても楽しめます。
VICARAの唯一無二のグリニョリーノ
UCCELLETTA | MONFERACE Grignolino del Monferrato Casalese DOC
彼らの約1.3haのクリュ'’ブリッコ デッルッチェッラータ’’で栽培されるグリニョリーノを使用。
この畑は先祖から受け継いで80年以上経ちます。Uccellettaは鳥を意味し、いろんな種の鳥たちが巣を作り、畑でそのさえずりを聞きながら働いたという話から名づけられました。
オーストリア製オーク大樽で24カ月熟成させます。これは一般的なグリニョリーノの作り方とは大きく異なります。更に瓶熟成期間を長く取ります。そうしてエレガントで複雑みのあるワインに仕上がります。色は少し薄茶けた赤色で淵にオレンジ色が見られます。
香りはスパイスなど豊かで、口に含むとストレートでエレガント、タンニンは柔らかくシルキー、余韻がとても長い。とにかくキレイな印象が強く、すき焼きや神戸牛のお寿司など質の良いサシが入ったお肉に合わせたい。というのは、余談ですが、ピエモンテではバットゥータなど生肉を食べる習慣があるのと、日本食がブームでお肉のお寿司も出回っているそうです。
その他、VICARAのデイリーワインとして
VOLPUVA | Barbera del Monferrato DOC (バルベーラ) ステンレスタンク使用
G Grignolino del Monferrato Casalese DOC (グリニョリーノリーノ)ステンレスタンク使用
●バルベーラの希少生産ワイン:
CASCINA ROCCA 33 Barbera del Monferrato DOC
バルベーラ。先祖から引き継いだ畑で2200本という少量生産、それも良年のみ。
8-10カ月のトノー木樽で熟成。
VICARAワイナリー URL: https://www.vicara.it/it/la-campagna/
1997年ヴィンテージワインのテイスティングは次回レポートします。