【カレマ協同組合 Cantina Produttori Nebbiolo di Carema】
14時まで待ってようやく開いたので入ってみると、まずショップがあり、1人大柄なおじさんが、男性客に試飲をさせながら、説明していました。
車で来ていたようで、6本入りの箱で買っていかれました。
変なアジア人が入ってきたと思っていたのだろうか、「カンティーナの見学をさせてほしい」とイタリア語で尋ねるとようやく関心を持ってくれたようで、電気を付けて案内してくれました。
1960年に10農家さんほどで発足し、 現在は13ヘクタールの畑、約75の農家さんからブドウを仕入れているそうです。
このカンティーナはカレマ特有の栽培方法を保護し、またその価値を高める役割があるのだと言います。その特有の栽培方法はテラッツァメント(段々畑)に石と石灰で出来た石柱(ピルンとこの辺りで呼ばれる)を使ってペルゴラ仕立て(この地方ではトピアといいます)で栽培しています。
カレマ村に制限して認定された『CAREMA DOC』を1967年に取得しています。現在、ヴァッレダオスタ州との州境から広がる24ヘクタールの畑だそうで、とても小さな『ネッビオロのDOC』と言えます。
【テイスティング】
≪TOURNET トゥルネ≫ ネッビオロ100%, ロゼ、2024年ヴィンテージ
「 ワイン名は『一番涼しい場所』というファンタジー名前だけど、その名の通りとても酸が高くフレッシュで、フルーティなんですよ」とおじさんが説明してくれました。
この冷涼な地域のネッビオロはタンニンはとても柔らかく、ランゲ地域のネッビオロとの違いが見られます。アルコール度11.5%
≪SPUMANTE METODO CLASSICO スプマンテ メトドクラシコ≫ネッビオロ100%, ロゼ、2021年ヴィンテージ、2025年11月にSboccatura(澱引き)、つまり約30カ月かけて2次発酵させた訳ですね。泡がとてもきめ細やでペルラージュ気泡も長く続きます。
パドセ(加糖なし)、0.6-7%の残糖度でとてもドライですが、ラズベリーのようなフルーティさがあり、一般的な酵母やパン屋の香りは殆どしません。
おじさんは「Bitterを思わせます、後味のほんのり苦みがあるでしょ」
このワインに使うブドウは勿論手摘みで完全な元気なものだけを厳選して造られ、年間3,500本ほどだそうです。スプマンテなので10日ほど早めに収穫します。

狭いカンティーナですが、ステンレス、木樽、セメントの容器がありました。CAREMA DOCは大樽を使用しますが、ラベルによってはバリックも使用しており、同じカレマのネッビオロですが、
古典的なものだけだとお客のニーズに合わない場合もあるので、同じブドウで造り方を変え、ラベルをいくつか作っており、年間3万~5万本生産しているそうです。
おじさんに「日本人なの?イタリアに住んでるの?」と聞かれ、日本市場の話になった、彼らは日本に20年来輸出しているそうです。ところが、「日本は最近落ちてるんですよね。注文が滞っているんで残念だ。」 「初期はイタリア商事の若い元気な男子が一生懸命やってくれてたんだけど、その後モノポリオでテラヴェールさんに変わり数は増えたんだけど、最近はどうも・・・」という感じで残念がってらっしゃいました。
カレマ DOCは 特徴的な栽培という背景と冷涼気候で造るエレガントなネッビオロという魅力があり、日本でも増えるといいな、と思った次第です。

【テイスティング CAREMA DOC 3種類】(写真一番上の右側)
≪Carema Doc カレマ≫ アルコール度12.5% 2021年ヴィンテージ
「2021年は今年のように極端に暑い年ではなかったので、軽やかな仕上がりになっています。
このワインはガストロノミーなワインとしてお勧めです。酸がしっかり、タンニン柔らか。口の中でお食事の脂分を流してくれるので、ワインを一口飲むとまた食したくなり、食するとまた飲みたくなるというどんどん飲めて生産者も嬉しいワインなのです。」と笑って話してました。
≪Carema Doc RISERVA カレマ≫アルコール度13% 2020年ヴィンテージ
2020年はカレマでとても良い年、確かに暑かった年でおじさんも大好きだそうです。
)ワインは味わいに発展がみられ、スペツィアート(スパイス)なニュアンスがあり、コルポーゾ(ボディ、肉厚)があります。
本当に香りが素晴らしく、持続性もあります。
≪Carema Doc カレマ≫ アルコール度13% 2020年ヴィンテージ
蝋キャップ(Gommalacca)を使用したこちらのボトルは、伝統から離れてバリック、トノーを使用。
年間2000本しか造られない、新しい試みです。新樽ではないため、ネビオロの個性を残しながら、バニラなどの香りがあり、先と同じ2020年でもよりまろやかさが強調され、バランスが良かったです。
【CARAEMA DOC 規定】では3年熟成が必要ですが、こちらのカンティーナではプラスで行っています。本来2022年が出回るところ、2021年が出ていました。
「1967年DOCが出来たときは5年の熟成だったが、それは非現実的でした。3年に変わったが、常に少し長めに寝かせて市場に出してます。」
「カレマは小さな世界で、良い年で400-450ヘクトリットルの生産量、よくない年は350ヘクトリットル。昨年2024は雨も多くイタリア全体に厳しい年でしたが、ここは180ヘクトリットルと半分以下だっだのです。」
「ALBAはよくドルチェットがBarolizzato(バローロ化)していると言われるが、CAREMAはネッビオロが Pinotteggiato(ピノノワール化)しているという」
その大きな理由は栽培仕立てにあります。
ペルゴラ仕立ては決して直射を受けることがないため、香り成分を成熟させることができます。
それに対してFIRALE(垣根式)の栽培ですと、色が濃くなり、構造のしっかりとしたブドウに仕上がります。
CAREMAの畑にも少しFIRALE(垣根式)も見られるようになりましたが、私はいつもペルゴラ仕立てとフイラーレ(垣根式)栽培との違いが明確だと説明します。
香りの豊かさは、この2つを比べると断然ペルゴラ仕立ての方が素晴らしいのです。
【Canavese DOC】
数年前まではトリノ県(Provincia)の赤ワインDOCはCAREMAだけで、白はERBALUCEだけでした。
今ではカレマを含む更に広がった範囲にCANAVESE DOCがありその中にNebbiolo ROSSO DOCも出来ました。またFLEISAフレイザもあります。
しかしトリノでは、なかなかCAREMAのワインは見られず、やはりランゲ、バローロ、バルバレスコが出回っています。
【スクリューキャップ TAPPO A VITE】
最近話題のスクリューキャップについて聞いてみると、「やはりカレマは伝統主義なので、コルク(Sughero)を使用してますよ。」
【Presidio Carema Slow Food スローフード】
カレマの伝統的な栽培方法や村の景色、独特の土壌、そして郷土ワインといった多様性Biodiversita'を保護する観点より2014年からスローフードに指定されました。
昨年より、スローフードのプロジェクトで、一部の畑、カンティーナでBIOLOGICO(ビオ)製法を取り入れ始めたそうです。各畑はとても小さいのでビオの認定は取れないので、販売に貢献するというよりは、カレマでワイン造りをする人たちの機運を盛り上げるためだそうです。
つまり生産者にサステイナブルなワイン造りを目指してもらい、また市場へのエシックなアプローチを進めているそうです。
『カレマのワインを買って、この唯一無二の村とそのEROICAなワイン造りを守ろう!』
Kyoko M 2025.07
http://lci-italia.com/
http://www.italia-vino.com/