2024年10月

2024年10月15日 (火)

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こちらのカンティーナで、アマローネが生まれたそうです。当時エノロゴが、伝統のワイン『レチョート 』甘口を造っておりましたが、ある日、開け忘れていた樽を味見したところ、’’アマローネ’’ (とっても苦い→渋い→辛口だ!)と言ったことが始まりです。つまり、すべての糖を酵母が食べつくしたため、辛口ワイン、それも重厚なワインへと変化していたのです。

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カンティーナは1500年代にこのValpolicellaに造られます、その後1700年代にこのフランス・シャトーの影響を受けたネオクラシック建築の館を直ぐそばに建てました。いわゆるパッラーディオ建築と言われ、16世紀に活躍した パドヴァ生まれの建築家アンドレーア・パッラーディオの設計から派生しヒントを得たヨーロッパの建築様式です。

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エントランスは木製の上にコーティングをし、いかにも大理石で造られたかのように見えます。

天井から壁にかけてフレスコ画があり、MUSE(ミューズ)が描かれています。ミューズはギリシア神話で、知的活動をつかさどる九人の女神です。4

1735年Abbazia di Negrar Valpolicellaに畑とこの館が建てられます。 1850年には Teuta di Piave di Colognola (Soave DOC)もGaetano Beratni当主の時代に所有することになります。1883年にはCorvinaの品種をグイヨ仕立てで栽培します。

ベルター二は現在、2つのワイナリーに分かれておりますが、引き継いだ兄弟の息子たち、つまり従妹同士が引き継いだ際に、それぞれの道を選択したようです。

一方はAngeliniホールディングスの傘下となり、こちら『テヌータ・サンタ・マリア』は、Gaetano Bertaniによって継承され、現当主は 兄弟の Giovanni Bertaniさんと Guglielmo Bertaniさんです。

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今回はGiovanniさんに招待を受けて、ワイナリーツアーに参加して参りました。残念ながらちょうどアジアにご出張中ということで、お会いできませんでした。

10名ほどのグループで見学ツアーが組まれており、最後に6種類のワインをテイスティングする90分ほどの内容です。

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エントランスの建物を抜けると『Giardino Inglese』イングリッシュガーデンが広がり、その奥にブドウ畑(グイヨ仕立て)が広がります。

英国風の庭はいろんな種類の木々、植物が自然に育ったように見えるのが特徴ですが、実際はそのように設計されたものです。小さな池のほとりにはお茶をする小屋が立っています。

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秋の庭には栗が沢山転がっていました。

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その脇からカンティーナへ、入口には昔使用していた、穴が残っています。ここから重力を使ってモストを地下の容器に流し込んでいたそうです。

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2階へ上がると、目に飛び込んでくるのが『Fruttaio di Appassimento』陰干し部屋です。

近年は湿度の高い日も増え、写真のように扇風機が備えてありました。

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通路には昔使用していたワイン醸造の器具が飾ってあります。

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1階に降りてくると、おおきな樽が並びます。今は使用していないもので、バリックとトノーを使用しているそうです。

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紋章の木彫りがある方がフレンチオーク、 大きく湾曲した方がスラボニア産オークです。

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更にセメントタンクが少し並んでいます。 昔はここで発酵させていましたが、今ではステンレスタンクに取って代わり、セメントでは最後のブレンドに使用しているそうです。

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最後はテイスティングの部屋へ。

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ここでスライドを見ながら、説明を受け、6種類テイスティングします。

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1本目は白、ソアヴェです。

LEPIGA SOAVE Doc: ネグラールの畑で3回に分けて収穫したものをブレンドします。シュールリーを施し、黄金色のエキゾチックなフルーツの香りとボディを生みます。

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Valopolicella Classico Superiore Doc 2022: アルコール度14.5%

Negrarの畑。2022年はとても暑かった年。

Corvina,Corvinone,Rondinella,Oseletaのブドウ。14か月以上、大樽で寝かせます。

酸がしっかり、若いチェリーやリコリスなどの香りを楽しめます。

 

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Valpolicella Ripasso Classico Superiore Doc 2020:  アルコール度15%

リパッソという手法で、Valopolicellaのワインを更にアマローネの搾りかす(Vinacce)に浸すことで生まれるアロマや柔らかいビロードのようなタンニンに仕上がります。フルーツだけでなく、シナモンや胡椒などのスパイスも感じられます。

Amarone Classico Riserva della Valpolicella DOCG 2018:  アルコール度16%

コルヴィーナ 65-75% コルヴィノーネ 10-15%

ロンディネッラ(スパイシーな香り)、オゼレータ(小粒で色が濃い)

9月から約3か月間、陰干しすることで、40%以下の重さになります。

スラボニア産樽で5年寝かせます。

マラスキーノチェリーのリキュール漬け、カカオ、たばこ、ナツメグといった風味が強くなります。


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その他2種類はメルローの陰干しをしたもので、2019年はバラの花びらのような華やかさが際立つのに比べ、2013年はルバーブやバニラのスパイス感が感じられ、全く異なるものでした。

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お帰りの際、ショップがあり購入頂けます。

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お天気にも恵まれ、気持ちのよいテイスティングツアーでした。

2024年10月12日 Kyoko Matsuyama LCIイタリアカルチャースタジオ、IVS Japann

2024年10月10日 (木)

プロセッコの生産はイタリアでも一番多い7億本を超えるそうです。

生産地はヴェネトとフリウリに跨り広大である中、ヴァルドッビアーデネの約100haの畑『カルティッツェCartizze』はトップ Cruと格付けされています。続いてコネリアーノ・ヴァルドッビアーデネの『RIVE(リーヴェ)』と呼ばれる43の指定された畑がありますが、これらは一角です。

その希少なカルティッツェの畑も所有する、美しい友人クラウディアさん家族のワイナリー『Riva dei Frati リーヴァ・デイ・フラーティ』を紹介します。

10月知らずに訪問したのですが、翌々日ローマで挙式と人生重要な日の前々日にもかかわらず、歓迎してくれました。勉強熱心で禅の心を持つ誠実な方です。

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『RIVA dei FRATI』名前の由来(修道士の畑)という意味で、1256年に遡り、
FRATI(ドメニコ会修道士)が与えられた畑でブドウ、ワイン造りを始めたそうです。
 1876年 アダミ家はヴァルドッビアーデネでブドウ栽培、白ワインのスティルと微発泡(Frizzanti)のワイン造りを始める。

1960年 イタリアの他州も含め、自分たちのワインを販売し始める。この頃コンクールで知った醸造家たちと製法に磨きをかける。

1988年 大家族であるアダミ・メロット家の、チェーザレとマリーザがここで起業する。

2015年 彼らのカルティッツェのワインはロンドンで開催された国際ワイン&スピリッツコンクールで世界で優良なプロセッコ・スーペリオーレとして表彰される。

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『第九 Nona Sinfonia ノーナ・シンフォニア』 
 Valdobbiadene Prosecco Superiore DOCG Surlie 

COL FONDO(Sul lievto) 澱が残った状態なので残糖がない。マルティノッティ方式(シャルマ法式)でステンレスタンクで二次発酵を行った後、フィルターにかけずにボトリング。

この辺りの昔からの製法でいわゆるメトドクラシコで瓶内2次を行うこともあるが、澱引き(Sboccatura,デゴルジュマン)を行わない。

澱が沈んだ状態で上澄みを頂くのと、ボトルを揺らして澱を混ぜて濃厚な風味で味わうのと2種類楽しめます。

(ブルーのラインが入ったラベル)
『ヴァルドッビアーデネ・スーペリオーレDOCG エキストラ・ブリュット』 
 Valdobbiadene Superiore DOCG Extra Brut 
 残糖度3g/Lと非常に低く、ラベルのイメージ通り爽快感があります。


(ゴールドのラインが入ったラベル)
『ヴァルドッビアーデネ・スーペリオーレDOCG ブリュット』 
 Valdobbiadene Prosecco Superiore DOCG Brut
 残糖度10-12g/L、バランスがよく舌平目のムニエルなど加熱したお魚料理に合わせたい。

(ブラックのラインが入ったラベル)
『ヴァルドッビアーデネ・スーペリオーレDOCG エキストラ・ドライ』 

 Valdobbiadene Prosecco Superiore DOCG Extra Dry
 残糖度15-16g/L、トロピカルフルーツの香りを楽しみながら、フレッシュや少し熟成したチーズを合わせたい。

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ここはワインショップとテイスティング用にヴァルドッビアーデネに開いた場所です。

彼らのヴァルドッビアーデネ・スーペリオーレ(プロセッコ)は、残糖度のバリエーション(パドセ、エキストラ・ブリュット、ブリュット、エキストラ:ドライ)とあり、好みやアッビナメントで楽しめます。

どのタイプも泡のきめ細かさ、エレガントな仕上がりで余韻が長く、生産者の性格が表れているのか安定した味わいで安心感を与えてくれます。

日本で2回お目にかかりましたが、未だインポーターがいないので日本で頂けないのが残念です。

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⑤『ヴァルドッビアーデネ・スーペリオーレDOCG カルティッツェ』 
 Valdobbiadene Prosecco Superiore DOCG CARTIZZE
 アプリコットやパイナップルの香り、糖度もあるのでフルーツタルトなどのドルチェに合わせたい。


 カンティーナ Cantina

カンティーナはヴァルドッビアーデネから車で10分ほど下ったコルヌーダにあります。

父親チェーザレの話では、アダミ・メロット家には4人の息子がおり、畑が3つしかなかったので、

いわゆるくじ引きで、テーブル上で木の枝の倒れた先にいる者が土地を出るという事になったそうです。昔はそんなもんだったと楽しそうに話していました。 

そこで、奥様の方に所縁がある場所コルヌーダにカンティーナを開いたそうです。

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 MARCOさん(お兄さん)醸造について語る

la Vinificazione 醸造
ソフトプレス(空気圧式膜圧搾機)で果皮と果汁を分け、タンクで一晩寝かせた後、全体の6-7%の
果皮と残存する枝や種を取り除き、果汁 “mosto fiore”を別のタンクに移します。
SO2の添加により清澄を促し酸化を防ぎます。

la Fermentazione  アルコール発酵

培養酵母を使用しますが、酵母についてはチェーザレ氏が語ってくれましたが自然酵母からセレクトしたものを注入するそうです。

酵母がグルコースを食べてCO2とアルコールを生成します。CO2は消えて度数9-10%のアルコールができます。フィルターにかけ澱を取り除き、別のタンクへ移します。
 
プロセッコ組合では翌年2025年1月までDOCGは販売できませんが、ワインの品質を上げるためにも
酵母が働きやすい春の暖かい頃まで待ってから、2次発酵を行います。 

la Spumantizzazione スプマティザツィオーネ 2次発酵

プレーザ・ディ・スプーマとも言って、ここでは伝統的にマルティノッティ方式(シャルマ法式)を
使用して泡を造ります。温度管理可能な密閉状態の大きなステンレスタンクで酵母と糖(サッカロース)
を加え、30日かけて(1日0.2バール)13度に設定してフレッシュなフルーティ、フローラルな
香りを引き出します。最終6バール、糖度は仕上げるワインによって止めます。
 
フィルターを掛けて澱を除いてからボトリングします。その後、プロセッコ委員会に提出し、
郷土的ワインかどうか審査され、合格したらDOCGのシール帯がもらえます。
なんとも厳しい工程ですね。
余談ですが、イタリアは総じて他国より検査が厳しいそうです。昔メタノール事件があってから
健康を阻害することのないよう、体制が組まれたようです。

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VENDEMMIA(収穫)

ヴァルドッビアーデネ・スーペリオーレのブドウは全て手摘みです。
通常9月ですが年に依ります。2024年は曇りで涼しくとても良かったそうです。2022年はとても
暑くて雨が6か月も降らず、収穫に6時間以上かかった大変な年だったそうです。

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Barbatella(苗木)10月に4月~ハウスで育てた苗木が届き、これから植樹するところです。
通常畑に植樹するのは4月だがブドウが実をつけ生産し始めるまでに5年を要します。
この苗木を使用することで1年短縮でき、4年後の2028年にはワイン用のブドウが出来るわけです。
しかし古い苗木から植替えするのに苗木代もすべて含めて1本あたり40~50€かかるそうです。

昔は樹齢40年以上であったが、最近は量を求める余りストレスで20-25年程度だそうです。

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LIEVITI (酵母)

培養酵母はBayanusなどの2種類を使用しているが、ここに住み着いている自然酵母が多種あり
適したものを1種選び注入するそうです。

Claudiaさんの父親Cesale氏は元々エンジニアで、機械をいくつも造っているそうです。
例えばこちらは、酵母を適温20℃にして発動させるもので、この温度でワインの香りが左右します。
失敗もあったそうで、最初低温の方がフレッシュなフルーツの香りが出来ると思い、14℃で試した
ところ失敗。26℃ではフルーツジャムの香りとなり失敗。20℃で発動させ、16-17℃で発酵させ
るのが最良と
わかった。
因みに気圧は24時間で0.2バールのスピードが望ましい。
彼の研究家魂がひしひしと伝わってきました・・・どうやら2年前に脳の動脈瘤で1年以上生死を
さまよったという。長い間お休みをしたので今は元気だと仰ってました(笑)

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 酒石酸: たまにグラスの底にクリスタル状の物質が見られますが、これは酒石酸acido tartaricoです。
ブドウにもワインにも存在するミネラル成分で、温度ショックで固形として現れます。
チェーザレ氏はマイナス4度でワインの状態を安定させて、現れないように注意しているそうです。
只レストランなどで急冷、例えば塩を使用してマイナス10℃などショックを与えると酒石酸の固形が
現れますがこれはワインのクオリティを損ねるので間違った方法と話していました。

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真ん中の彼女は入ったばかりのスタッフと、クラウディアさんご両親です。

ワイナリーホームページ:https://www.rivadeifrati.it/

ヴァルドッビアーデネはその周りのアゾーロやバッサノ・デッラ・グラッパも含め、ヴェネト州へ行くなら、必見の素敵な場所です。

2024年10月訪問 Kyoko M