自然派ワイン造りで知られるパオロ・ベア
今回は建築家である現当主ジャンピエロ・ベアが建てたカンティーナに注目したいと思います。
場所はウンブリア州のペルージャ県 モンテファルコの町
モンテファルコといえば、タンニンで歯茎がぎしぎし言う、とても特徴的な赤ワイン『サグランティーノ ・ディ・モンテファルコ』で有名な場所ですね。
驚くほどとても小さな町で、またイタリアの緑の中心(Cuore verde)と呼ばれるウンブリア州は
イタリアでは珍しく、海に面していない、山、森に囲まれた場所です。
1500年代からモンテファルコに住む祖先を持ち、Gianpaolo氏が家庭で親しんでいたワインやオリーブオイルを
他の人たちにも味わって幸せな気持ちになってもらいたいと始めたそうです。
今や息子さんのGianpieroさん達が自然の力で造る考えを引き継いでいます。自然に左右されるので年によって出来る量も変わります。
Gianpieroさんは奥様の建築家で二人のアイデアがあふれるカンティーナなのですね。
カンティーナ:エコロジーを考慮した自然エネルギーを活用した建築。
見た目もモダンで美しい建物ですが、陽当たりを考慮して余り日射が入らない向きに正面があり、
上階に積んだブドウを中に入れられるスムーズな橋を渡してあります。
また重力を使って自然にタンクに送れるような流れです。
昔と現代を象徴的に表した圧搾機(Torchio)。
風通しの良い部屋にはブドウを陰干しする棚がオブジェのように置かれておりました。
真ん中は見本ですが、このように時期になると、この部屋一面にブドウをひと房ずつ並べます。
雨の日も風が強い日も毎日、朝晩チェックしにきて、常に風通しが良い環境にします。
『GRATICCI』グラティッチ:トウやヨシで編んだ棚
『サグランティーノ』のブドウの名前はサグラ(祭り)に由来
祭りの時に親しまれたワインだそうで、昔は甘いワインが好まれたこともあり、陰干しをしてパッシートワインを造ることが主流でした。
今もこのパッシートは作ってらっしゃいますが、時代と共にセッコ(ドライ)の需要が増してきました。
自然と人間の行動の最良のバランスを求めて、化学肥料や薬品などは一切使用せず、その土地、環境で生まれるワインという飲料を頂戴しているという哲学なのです。
"自然は観察し、耳を傾け、寄り添うもので、決して支配してはいけない。
地下のワイン貯蔵庫ですが、奥の隙間から、地層が見えるようにしてあり、更に水が奥深いところに
流れていることが分かります。壁に使用している石はこの辺りの土地で採れる石灰の石で造ってあり、
温度が夏も変わらず涼しく保たれます。このことでエネルギー資源も殆ど使用せず、自然に優しいという訳です。
2004年 il GRUPPO ViniVeri設立
Giampiero氏は Angiolino MAULE 氏(ヴェネト州), Fabrizio NICCOLAINI氏 (トスカーナ州)、 Stanislao RADIKON 氏(フリウリ州)と共に自然の過程でワインを造ることを信念に『ヴィー二ヴェーリ』という組織を立ち上げました。
Montefalco モンテファルコの町のお勧めレストラン
中心の広場の角にある『エノテカ・アルキミスタ(Enoteca Alchimista)』
テラスは眺めも良い、お昼に頂くワインは頑張ってここまで来たご褒美のよう。
訪れた時期は赤玉ねぎの美味しい季節だったので、
『Zuppetta di cipolle rosse con Uova in camicia 』ポーチドエッグと赤玉ねぎのスープ
『Lombata di coniglio』 ウサギの肉巻き
イタリアのミラノ各地からメディアの方がたがいらして、セミナーを開くGianpieroさん。
ここで、彼の白ワイン『Arboreus』を記しておきたい。
ブドウは『トレッビアーノ・スポレティーノ』
標高200mの畑に、栽培仕立ては『Viti maritate (ヴィーティ・マリターテ)』
コルドーネ・スペロナートの垣根仕立てをベースに、楓の樹に絡めて上部房を付ける昔の方法を再現しているそうです。
エトルリア人が考案したこの栽培仕立ては、壁画や絵画にも見られます。
例)
『アルボレウス』のワイン
名前は樹に絡める仕立てから『樹』を意味する『アルべロ』が語源です。
果皮と一緒に20日間ほどマセラシオンをします。
更に醸造した後、澱と寝かすシュールリーを行うため、アプリコットのような熟したフルーツの香りが広がり、ハチミツのような濃厚さも感じられます。
2016年10月の写真
オリーブの収穫を手摘みで行っていました。
ウンブリアのこうした手摘みのオリーブオイルは濃厚で、少量しかできませんが、栄養価の高い
ブルスケッタにしてオリーブオイルそのものを味合うのがお勧めです。
品種はMoraiolo(モライオーロ)が主体です。
(Kyoko Matsuyama)
イタリアワインを勉強してみたい方は、こちらの本をご覧ください。
『イタリワインの選び方講座』が始まります。こちらをクリック
更に、 WSAイタリアワイン専科ソムリエ資格コース はこちら!