2020年6月10日 (水)

シチリアよりビオディナミを選択したグッチョーネ

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エトナのある西側は『動:Dinamico』、東側は『静:Statico』

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シチリアで有名なワイン生産地といえば、エトナ、つまり東側。ここはその反対側に位置します。

造り手Francescoさんが仰るには、エトナ火山の影響をシチリア全土が受けており、その恵みを授かっている。

東側が噴火のエネルギーが沸き起こる『動』で、西側はそれを吸収する『静』。こうしてシチリアはバランスを取っているといいます。



 

La Biodinamica ビオディナミ

フランチェスコさんにとって、『土壌』『熱』『水』『光』の4つの自然要素をワインに与える唯一の方法が『ビオディナミ』と考えます。

更に、5つ目の根本となる要素は畑でブドウを育てる人『Vignaiolo(ビニャイオーロ)』の手仕事

ビオディナミを選んだきっかけは当時10歳になる息子さんをシュタイナー教育の学校に入学させる時にその考えに感銘を受け、それからビオディナミをワイン造りにも選ばれたようです。

ビオディナミの特徴的な手法:

プレパラシオン500(preparato): 水晶の粉末を水で溶いて牛の角に詰めたものを、土中に埋めます。

プレパラシオン501:牛の糞を牝牛の角に詰めて角の先だけ出た状態で埋めることで、角から自然のエネルギーを吸収するそうです。

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フランチェスコさんは上記500、501以外に、土壌の状態が大事だと話します。 冬の間も土壌を自然の状態で維持するために雑草の緑肥を作って利用しています。 

春は草花がより育ち易い環境に剪定、土は掘り返して耕さずに砕く程度に整え、馬鍬を使って土に起こし、土底へ酸素を与えることで、水分が蒸発するのを抑え、余分な潅漑をする必要がなくなります。  



フランチェスコさんのワイン造りの基本:

✫アルコール発酵は自然の過程で行います。

  ‐酵母はカンティーナに住みついている自然酵母。

 ‐酵素や菌などの添加は一切しません。

✫ぶどう本来の力、恵みを活かします

 -ブドウやワインに対して修正を行わない:

-NO クリオ・エクストラクション(収穫したブドウを人工的に凍らせて糖度の高いワインを造る手法)

-NO 酸化防止剤

-NO 濃縮

-NO 加糖

-NO 清澄剤 

 -NO 無菌濾過

-NO アロマティックな酵母や遺伝子組換え酵母

-NO アロマ(粉末タンニン,オークの木くず)の添加

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2016年に訪れた時は10月1日Vendemmia(葡萄の収穫)が行われました。

Guccioneが栽培する品種は白はTrebbianoとCataratto。赤はPerriconeというこのエリアの土着品種とNerello Mascalese。

畑はカンティーナから10分程車で行った実家の前に広がります。ブドウ畑は6ヘクタールで、後の4ヘクタールは野菜などを栽培したりしています。

東西南に開けた土地で太陽の光を常に浴び、風通しがよく、標高約500mで昼夜寒暖の差もあります。

土壌は全体的に白い石灰質と黒い粘土質が混ざっており、彼が言うには、昔丁度真ん中辺りに川が流れていたそうです。そのため地深くには山の恵みである地下水があります。また緩やかに傾斜になっている為、水はけは良いそうです。

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彼のカタラットとペッリコーネは素直に感動します。

右の写真はPerriconeの自然酵母によってアルコール発酵中です。

毎日櫂入れ(Rompere il capello 皮を破るという意/Follatura)というかき混ぜる作業を行います。

醗酵中にガスが発生し果皮などが浮いてくるため、色素等の成分抽出などムラの無いように醗酵を促します。

私も体験したのですが、棒自体がとても重く、更に皮が表面に固まっているのを砕くのは本当に腰から力を入れてやっとでした。

左の写真はカタラット。自然酵母によってアルコール発酵に入るところです。収穫翌日で表面に浮かんできた澱を掬い出す作業をザルを使って行いました。Pazienza!の仕事ですよと仰ってましたが、本当に根気の要る仕事です。

Catarratto カタラット100%


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   ここではカタラットの中でもエクストラ・ルチドを栽培しており、希少品種です。

   とても洗練されており、アロマが繊細な豊かさを持ち、香りはグラス一杯に広がります。

   力強さというより、個性的なワインといえます。



Perricone ペッリコーネ100%

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 シチリア西部の土着品種、ペッリコーネ。

 その昔、『マルサラ酒』に使用されたり、ボディをしっかりさせる為にブレンドされたりしていたブドウです。

 ところがペッリコーネだけでワインにすると、 ふくよかなボディだけでなく、エレガントなワインに仕上がっています。 その理由にはやはりミクロクリマがあり、畑は標高500mに位置し、海が近いことから、ヨウ素を含んだ海風にさらされ、このブドウにやや冷涼地の条件を与えています。

 イタリアで60ユーロで販売されています。

 日本にも入荷しております。



ワイナリー『Guccione』

Francescoさんはとても穏やかな方という印象を受けました。彼のご実家は地主であり農家を営む恵まれた家柄だったようで、小さい頃、家族でおばあ様の別荘があるパンテレリア島で夏を過ごされたようです。そこにあのジョルジョ・アルマーニ氏がよく遊びにいらしていたそうです。

彼は画家でもあり、将来もっと世界を周って絵を描きたいと話していました。

お住まいはお父様が1968年のベリーチェ渓谷の地震の後少しずつ修復されたそうですが、本当に素晴らしい家でした。庭にはシチリアではOrtigiaにしか生息しないというパピルスも植えてあり、猫たちが幸せそうでした。豚や鶏もいましたが、昔はシチメンチョウも10羽近く飼っていたそうですが、飼い犬がある晩全てを殺ってしまったそうです。これも自然の姿ですね。

畑はBIOとして登録しているそうですが、ワインには申請せず、DOPなどにも興味がなく、素直に自然のワインを追求した美味しいワインを求めている姿勢が伺えます。

VdTの為、ビンテージはLotto番号の横に書いてあります。蝋キャップを使用しているボトルもありなます。

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