プロセッコ・ヴァルドッビアーデネの生産者ADAMIの当主フランコ氏は、プロセッコ協会会長も担っております。
畑を共に歩き、彼の熱い想いを伺うことが出来ました。
フランコ氏が最初に「40秒で Prosecco プロセッコとは何か語ります。」と言って始まった。
「プロセッコとは一つの地域で、2つの州(ヴェネトとフリウリ)にまたがった9つの県にあります。そこで栽培されるブドウ「グレーラ」を使用して規定に沿って造られるワインがプロセッコDOCです。トレヴィーゾ県は一番生産量が多く、北側に2つの丘陵地「Asolo アゾロ」と「Conegliano Valdobbiadene コネリアーノ・ヴァルドッビアーデネ」があります。後者が世界中に知られる近代のトップレベルのプロセッコが生まれた地です。」
さて、ブドウは「グレーラ」(以前プロセッコと呼ばれていた)の栽培は、1920-30-40年代の話ですが、ヴァルドッッビアーデネで始まり、コネリアーノへ発展していきます。
1937年 Farra di Soligo他小さな3つの村に1,000haの畑があり、ここでプロセッコが生まれる。
プロセッコ・スプマンテのメトド(製法)の誕生
Carpene氏に感謝したい、というのも彼が1800年終り~1900年初頭にMartinotti氏と知り合う。
マルティノッティ氏はを瓶内ではなく、大容器で2次発酵させる方法を考えた人です。「モスカート・ディ・アスティ」アロマティックな香りやフルーティな風味を残すために 早く酵母と分離させたのです。(後に仏のシャルマ氏が特許を取ったのでシャルマ法というが、イタリアではマルティノッティ法とも呼ばれています)
カルペネ氏はマルティノッティからこの方法を学び取り入れプロセッコを作ったのです。第2次世界大戦後の1945年からここヴァルドッッビアーデネで生産者たちがこの方法でスプマンテを造り始めました。
昔スプマンテのことをイタリアのシャンパンと呼んでいたように、瓶内発酵していたのですが、カルペネ氏はその方法ではプロセッコの価値を最大限に活かせないと考え、費用削減のために選んだわけではなく、素晴らしいワインを造るための一大プロジェクトだったのです。
なぜこの地に発展したかというと、このあたりの丘陵地はトウモロコシなど穀類や他の作物を栽培できない急斜面だったので、この傾斜ある丘陵地を最大限に利用したという功績でもあります。
Valdobbiadeneの土壌について
東のコネリアーノのモレーン(堆積)と異なり西側のヴァルドッッビアーデネは古代海底であった土地が隆起した場所で、湖が出来、砂が沈んで固まって砂岩(arenaria)になった。この辺りはこのオレンジ交じりの白い岩やこの塊の上に砂、土が50-60cmまたは30cmほどの深さがあります。
ブドウの樹はこの岩の隙間に根を伸ばし水分、養分を求めます。土壌は豊かではないため、クオリティの高いブドウが出来ます。
気候は湿度が低く、日照が適度にあり、冷涼な風があり乾燥し、病気対策も不要です。こうして出来たブドウはとても軽やかな仕上がりで、スプマンテにピッタリなのです。春のフルーティさ、フローラルさ、リンゴ、洋ナシ、バナナ、アプリコットなど造り手の個性が表現されます。
斜面の向きはバラバラです。よってADAMIではミクロクリマ(メゾクリマ)毎に区画を分けて、収穫醸造しキュヴェを造り、酸度が高い、低い、骨格がある、ない、香りがリンゴ、洋ナシなどのそれぞれの個性あるキュヴェをブレンドします。
しかし、大きな畑ではそれは人手も費用も掛かりキュヴェ造りはできないため、Cru’(クリュ)としてヴィンテージ事の違い、個性を表現します。
Adamiでは30種類に分けて醸造しています。12月から1月にかけて何度もテイスティングを重ね、ブレンドの仕方を考え、Extra dry, Brutなどに分けます。
2つのCru’を所有しております。1つはVigneto Giardino-Rive di Colbertaldo di Vidor:カンティーナより西側にありすり鉢状(アンフィテアトロ)、4ha,地域で初のCru。遅めの収穫で糖度を上げ、補糖も行います。
もう1つはRive di Farra Di Solgo 'Col Credas' :カンティーナから8kmほどにある。 標高300m。補糖なし(non dosato)にぴったりなブドウが生まれます。
「ブドウは混ぜてはいけない、必要ならばワインを混ぜなさい」
フランコさんの祖父様が初めて行ったのが1933年。シエナで初のイタリア土着ワインのイベントが開催された際に、このGiardinoとCartizzeドライの2本を紹介したそうです。
そして哲学として祖父から父へ、父から私フランコ氏と兄弟に、さらに子供たちに伝え守られています。
2009年 DOCGに昇格。そこでRIVE(畑の区画)としてGiardino, Ferra di Solioが指定される。
RIVEを表記するのは、畑はどこも同じではないことを明示するためである。生産者はその土地の個性をボトルの中のワインに表現しなければいけない。
Vignento Giardinoと同様の土壌層ははヴィットーリオ・ヴェネトまでずっと続くが、この辺りは砂岩が多い、Farra di Soliaは石灰質が多い、Coneliarnoは鉄分が多いと違いがあるのです。
収穫について、「どんなワインを造りたいか」「どんな年であるか」によって決まります。化学分析だけでは決められません、私は30㎏のブドウを食べます。8月末から9月10日まで50の畑を2回周って、150粒を取って健康状態を見て、さらに味見します。
●Buccia果皮-タンニンがあること、Verde(熟していない、固い)ではないこと、
●Vinacciolo 種- 3/4:Maron(熟した) 1/4:Verde(若い)
スプマンテを造るのであってスティルのワインではないから。
●Gusto味:美味しいこと。
それから何日後に収穫するかを決めます。
Pressatura(プレス)
健康なブドウならば、タンニンも熟しており、しっかりプレスしてボディのあるワインに仕上げます。
まずは軽やかなワインを造る必要があります。その後ボディを調節します。風味は舌の先で感じる甘味部分が重要であり、奥の苦味ではありません。
最近の温暖化で酷暑もありますが、基本的には適度な雨量が常にあります。只、集中豪雨は問題になります。
世界遺産ユネスコに登録 2019年
Ciglione チリオーネ
プロセッコの世界遺産といえば、急斜面にブドウの樹が列をなして風光明媚な映像を浮かべると思います。この樹の畝を「チリオーネ」と呼びます。
テラス式(terrazzamento)の石の代わりに草のない土を用いた手法で、斜面の硬化と崩れを防ぎます。チリオーネの歴史は16~17世紀に遡り、今でも傾斜15°~60°のエリアの約64%で使用されています。
私たちの使命は、これを維持することです。
続く・・・
2024.10 訪問 Kyoko Matsuyama