シチリアのマルサラの伝統を未来に繋げたいNinoBarracoのワイン
イギリス人が作った酒精強化のマルサラ酒ではなく、元々地元で飲まれていた、名前のないワインがあります。Antonio&Angelaは『アルトグラード』と商標登録して2009年から研究を重ねながら造ってきましたが、この土地の土着品種と言われる『グリッロ』と『カタラット』についてAngelaさんが語ってくれました。

4)CATARRATTO カタラット
カタラットは何十年にもわたり、トラパニ県はヨーロッパ(フランス含め)で最大のブドウ栽培面積を擁する県でした。その80%がカタラットであったにもかかわらず、カタラット100%で造られるワインは見られなかった。私たちが2004年に始めたのが最初の方です。ラベルにカタラットと表記することは重要なコミュニケーションの方法であり、我々にとってカタラットは常に栽培してきた身近な存在であり、家族を紹介するようなもの、経済を支えてきたブドウなんですから。
しかし重要なワインとして認識されてきませんでした、やはりブレンド品種であったから。只、高いアルコール、色が濃いことで、イタリア北部、フランスへと他方へ売られていました。
一方、1980年代に国際品種が入ってきて、最良品種と呼ばれ高値で売る事ができたため、あっという間に増えました。
ワインのラベルには品種名をつけてきましたが、それはTerritorio(地域)やブドウを打ち出したかったからです。
醸造容器にはステンレスタンクとセメントタンクを用いています。しかし、この品種特性上、木樽の香りが感じられるとよく言われたものです。ミネラルなどの感覚が木樽を使用した時の香りと我々の頭では認識されてしまうようです。
火山起源の岩があるエリア(ミネラル豊富)で育つブドウの特徴を強調したかったので長めの熟成を取り入れた。カタラットはグリッロと異なり1年ほど寝かすことでより個性を表現できる。また、マロラクティックを行うため、まろやかさが増しSO2を多く使用しなくともワインを保護できより長く安定したワインとなる。
5)BIANCO G ビアンコ G (Gはグリッロを指す)
ラベル名は残念ながら2004-2020までグリッロと記載できたがSICILIA DOCでないとグリッロの品種名は記載できなくなった。またSiciliaDOCと記載するためには協会の基準パラメータに従う必要があり、我々のグリッロには当てはまらなかったのです。
2004から同じ畑、トラパニ南部にあり、ここから65kmほど、海から1キロの海岸沿いビーチのような砂質土壌で エコシステムは独特、気温は高いが、砂土壌のすぐ下には涼しく湿度があり温度も変わります。ここは50年前からブドウ畑で、周囲は低木林に囲まれています。
当時、マルサラ地区はやや高価だったため、本来なら食用オリーブの栽培に適したエリアにまで及んでいました。当方の畑はマッツァレッティ地区に設けられ、今日まで守り続けてきました。
ところが現在のガソリンの高騰により畑への移動は、経済的にもはや合理的とは言えませんが、あまりにも美しいため、放棄出来ずにいます。Angelaさんの父親がこの畑で栽培し、20年以上にわたって地元の協同組合にブドウを供給してきました。 収穫量が減少し、抜根するのを機に、私たちが管理を引き継ぎました。2004年から手入れを続けていますので、もう20年以上になります。
生産量は減少傾向にあり、その分は別の畑で補っていますが、この古木が実をつける限り、私たちのブドウの大部分はここで収穫していくつもりです。Grilloが持つ真の力、複雑味を表現したいと考えています。アルコール度数は13%、味わいには確かな凝縮感が感じられます。この畑がもたらす成熟度とバランスの賜物であり、粘性の高いまろやかな仕上がりです。
ラベル、HP、カタログどこにもグリッロと記載できないため、嬉しくない状況です。Grilloは カタラットとZibibboの交配種、長期熟成可能、マルサレーゼ(酸化可)という特徴があり、この土地に欠かせないブドウなのです。
6) ALTO MARE アルトマーレ Semi-ossidativo 2019年スタート
グリッロのリゼルヴァともいえる、これまでの知識経験を1本のボトルに収めてみましたた。4種の畑、異なる収穫時期、4種の醸造技術とさまざま、品種はグリッロひとつです!
これら4つの種類のグリッロのブレンド
①Biancamare用のブドウ - 海側の畑, 早期収穫
②Bianco G用のブドウ、50年の歴史ある畑
③グリッロブドウを枝や種一緒に丸ごと使用 - 3カ月浸漬、12月までタンニンの抽出(樽ではなくブドウのタンニン)
④Altograo用のブドウ- 古樹、遅い収穫時期(完熟)
これら4種類を個別に醸造した後、栗の大樽(目が粗く空気を通す)25/30HLで1年充填なしで軽く酸化させる(マルサリスティカーマルサラの土地の慣習を投入)
瓶内熟成18か月、基本は25%づつの配分ですが年の状況によって変更します。
アルコール度13.5%
テイスティング 2022年、昔は白ブドウは標高の高いところに栽培され、低いところは黒ブドウだったが、近年、海側に白ブドウを栽培するようになった。つまりミネラルや酸をより重視するようになってきた証であり、このアルトマーレの名の通り、高地と海の見事な配合により、まさにグリッロの特性と土壌の個性が詰まったワインです。
よく考えられたNino Barracoの代表作品と言えます。

3種類の容器: ステンレス、セメント、木樽
それぞれの特徴を活かして醸造していきます。ステンレスタンクは酸やフレッシュさを残し、セメントタンクはまろやかさを表現します。
NINO BARRACO がワイナリーを始めた背景
1970-80年代、シチリアでは国際品種が普及し、有名醸造家は北部から来ていた為、いわゆるシチリア遺産はどんどん消えていったのです。
Antonio(Nino)さんは政治学、Angelaさんは法律とワインとは別の道に進んでいましたが、マルサラに実家があり、その家族はブドウ栽培し共同組合に販売していましたから、ワイン造りは間近に見ていた訳で、失われそうになっていたシチリアの遺産を未来に繋げたい想いから立ち上げたのです。
醸造所も畑も化学肥料0、あくまでビオで認められる硫酸銅のみ使用しています。発酵も自然酵母による自然発酵とし、畑の仕立てはアルベレッロ・マルサレーゼ、つまり、パンテレリアより高さがあり、エトナ地域よりも低めの中程度の高さをもつタイプです。
灌漑も行っておらず、その為ブドウ樹の根は深く、海水成分を吸収しミネラル(Sapidita)が感じられる理由のひとつです。

Varieta’ Reliquia(遺存品種)の復活支援活動
遺伝子研究機関と共に栽培されなくなってしまった土着品種を見つけ出し、新しい畑毎に2列だけ植樹して実験を行っています。
①Vitrarolo(ヴィトラローロ):黒ブドウ
②ORISI(オリーシ): 黒ブドウ こちらは中でも上手く育ったため増殖したそうです。サンジョヴェーゼとマントニコの自然交配種
フィロキセラ対策で、新しい畑で接ぎ木でない樹は取り除いて、挿し木(TALEA) を植えてから接ぎ木。殆ど全て接ぎ木をしており、8月にInnesto a campo 品種を選んで接ぎ木を施します。病気や気候変化による病気、汚染を避け、長寿できる樹を育てるための一つの方法なのです。
私が予定時間よりも早く着き過ぎたため、畑を案内頂いているところへAngelaさんが登場!まさに青空から現れた太陽のような方でした。
360℃見渡す限り畑で、さえぎる建物は一切なく海風がずーっと吹いていた。
『今年は、数年無かったほど、雨が沢山降ったので土の中に水分はしっかり溜まっているはず。今日のような日照で乾燥していても十分耐えられるでしょう、このまま行けば素晴らしい収穫に繋がるかと思うが、6月なので未だ断言するには早すぎるわね。』
土中に湿度を維持する為に、土の堀り起こし続けている、冬場はinerbimento草生栽培を行い、4月に動き始め収穫までずっと行うそうです。
例えばこの葉には少しペロノスポラ(べと病)の跡が見えますね。そこに硫酸銅液が施された跡があるでしょう。
インテリそうだがとても気さくで元気なAngelaさん。
土壌の成分は少し離れると異なります。この辺りは火山性土壌で黒っぽいが、海の方へ近づくと白く砂質があり、石灰質、粘土質なども交じり複雑です。とりわけこの土地の代表的な石 カルカレナイト(石灰質砂岩 / Calcarenite)は、スポンジのように多孔質で吸収しやすい性質です。
