中世の饗宴 il Banchetto Medievale~カスティリオン・フィオレンティーノ

中世の貴族気分を味わう~

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『ライフ・イズ・ビューティフル( La vita e bella) 』の映画の舞台でも有名なArezzo(アレッツォ)の街と『トスカーナの休日』の映画の舞台となったCortona(コルトーナ)の町の丁度間に位置する【カスティリオン・フィオレンティーノ(Castiglion-fiorentino)】という村があります。新市街も含むと13,000人規模であるが、旧市街(Centro-Storico)は標高の高い山の頂のように立っているとても小さな村である。

その昔エトルリア人によって造られ、てっぺんにはエトルリア遺跡博物館があるほどです。

また広場にあるヴァザーリの回廊が素晴らしく、そこから見下ろすように望む景色は夕陽の色に染まって、とても美しかった。

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さて、今回お邪魔したのは、バンケット・メディエヴァーレ(中世の饗宴を再現する)お祭りです。

カスティリオン・フィオレンティーノには3つのRIONE(区画)があり、各地区の旗を持っている。

6月の第3日曜日にはシエナで有名なパリオ(競馬)を、やはりここでも、3つの地区で争うそうだ。
●Terziere di Porta Fiorentina
●Rione Porta Romana
●Rione Cassero

このうちのテルツィエーレ・ディ・ポルタ・フィオレンティーナが主催するお祭りで、200名ほどの予約限定のとても思考を凝らした内容であった。

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この 門が開くと入場します。女性にはバラの花を渡して、席まで案内されます。

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サルティンバンコ(道化師)が、席に着くと、前で演奏してくれます。

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当時の僧侶の恰好をした人がキャンドルを灯して、出迎えてくれます。

若い女性たちはMadama(貴婦人)を装っています。実際には15歳と20歳の町の女の子たちでした。

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このテルツィエーレ・ディ・ポルタ・フィオレンティーナの旗のデザインは、緑とオレンジ色をベースに白いユリの花が描かれています。

主催者Rossano氏に伺ったところ、メディチ家によって支配されたフィレンツェは赤いユリの花です。つまり、赤いユリの花は教皇側、白いユリの花はローマ皇帝側を意味するのです。

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お料理は中世のシニョリーエSignorieや貴族たちがパーティで頂いていたものを、史実に基づいて再現しています。

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Banchetto Medievale Menu~
PRIMA MISSIO

ヤギのチーズと羊のチーズのはちみつ添え
Formaggio caprino e pecorino con miele


中世初期、メディチ家がチーズは微量しか食べてはいけないと指示していました。というのも、ミルクが凝固し発酵するメカニズムが解明されてなかったためだそうです。
中世後期になってこのバンケット(饗宴)が出来た時代、チーズが貴族たちの間で重宝されるようになり、宗教的断食の時期や四旬節にはお肉代わりに食されていました。


お肉とアロマティックホワイトソースのラザーニャ
Lasagna rustica con sugo bianco aromatico di carni
ラテン語で『ラガヌム』は、小麦粉で作った薄い生地をオーブンか直火で焼いたものです。その生地にお肉を挟んだ、今日のラザーニャの代の有名なグルメな料理人、アピシウスのレシピに既にあったようです。13世紀には普及し、大変好まれた料理であったため、いろんな記述が残っているそうです。その中にはチェッコ・アンジョリエーリという詩人がいて、美食、女性、ワインが大好きで『他人の小麦粉でラザニアを作る者の城には壁も堀も存在しない』と説いています。

SECONDA MISSIO
ウサギの詰め物、クローブとレンズマメのほんのり酸っぱいクリームのオーブン焼き
Coniglio ripieno al forno insaporito con chiodi di garofano su crema acidula di lenticchie
クローブは古代から豊かさの象徴です。中世ではこの貴重なスパイスは牛の半頭分または雄羊1頭分に値したそうです。ダンテ『神曲』地獄篇29章(浪費家に向けた)にその価値を説いています。世界の終わりに近づいている知らせを聞いた、登場人物ニッコロ・デイ・サリンベーニは裕福を誇示するために持てる金すべてを浪費すると決めた。そこでお肉のクローブの炭焼きを用意させたのです。
レンズ豆は一般的には貧しい食材であるが、貴族の宴の料理のように仕上げのソースとして活用し、シンプルなオリーブオイルとアロマだけではないアレンジを施したのです。


煮詰めた玉ねぎのホワイトソースにからめたイノシシ肉にフィノキエットとオレンジを添えて
Cinghiale della vallata in bianco accompagnato da cipolle caramellate e arancia con finocchietto fresco 


中世の料理ではお肉の2度焼きして、たくさんのスパイスと和えるのが重宝されていた。マエストロ・マルティーノはイタリアのガストロノミアに関する書物の原点となった料理作家であり、『料理芸術の本』では「野生の豚肉は調理され、ブイヨンで煮込む。」とある。狩猟肉を水と酢(またはワイン)で茹でて、オリーブオイルとスパイス(とりわけローリエ)で火にかけていた。
ローリエは貴重な植物で、園芸家クレシェンツィが「どんな食材も胃や脳のために、ローリエと火にかけるべき」と説いた。

TERZA MISSIO

リコッタチーズ、シナモン、アーモンドのタルトとヴィン・コンチョ
Torta rustica con ricotta, cannella e mandorle accompagnata da vin concio

ドルチェとヴィン・コンチョのスパイスの主役はシナモンです。中世の貴重で高価なスパイスのひとつで王宮で使用されていました。一族のご夫妻がお客様にこの貴重なのスパイスを捧げたいと選びました。更にはアーモンドは酔い止めに効果があります。著述家プルタルコスの話ではローマ皇帝ティベリウスの息子の客人である医者はいろんな人から果敢にワインを飲ませられても酔うことはありませんでした。翌日分かったことは彼は食事の前にアーモンドを食べていたのでした。

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日々練習をして披露するSbandieratori(ズバンディエラトーリたち)はこの村の若者たち。旗を投げて演技するのだが、かなりレベルの高い技術を持っていた。こうして若い衆が村を盛り上げる慣習は素晴らしく、微笑ましい。

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こちらはこの館の領主であり王様、王女様に扮しています。

 宴の終わりの方に、ある儀式が行われます。それは、6月に行われるパリオに向け、つまり戦いが始まることを意味するので、その間は指揮権を軍の隊長に引き継ぎます。 

よって、この領主から隊長へ剣を献上する儀式があります。

 饗宴の終わりを告げるのも、王様。彼のひと言で皆さん順に退席します。

 といっても12時半は過ぎておりました。



門をくぐると、ブラスバンドのみなさんと旗手たちに旗を振ってもらって、見送られます。

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(写真左下)今回お世話になったテルツィエーレ・ディ・ポルタ・フィオレンティーナのリーダーROSSANO氏

記念撮影。 

(写真右下)その夜泊まらせて頂いたResidence SantucceのオーナーLuisellaさんはモニカ・ベルッチのような美しく気さくな方でした。またチェントロ・ストリコを案内してくださり、本当に親切にして頂きました。『この村ではみんな顔見知りなので、鍵もほとんど掛けてないのよ。』

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2023.5.27  Castiglion-fiorentino        LCI-kyokoといくエノガストロノミアツアーより

     LCIイタリアカルチャースタジオ